【麻酔論文】 Perioperative Steroid Use for Tonsillectomy and Its Association with Reoperation for Posttonsillectomy Hemmorrhage: A Retrospective Cohort Study (Anesth Analg 2018; 126: 806-14)

扁桃摘出術に対する周術期ステロイドの使用と術後出血による再手術との関連性:レトロスペクティブコホート研究

 

【要約】

背景:ステロイド扁桃摘出術後の嘔気嘔吐・疼痛・回復の遅れといった合併症を減少させる。しかしながら、ステロイドによって扁桃摘出術後の再手術を要する重症出血が増加するかもしれない。

方法:周術期のステロイド使用と再手術を要する術後出血の危険性との関連を調べるために、病院毎の請求データベースを使用し、68病院の6149名の患者でレトロスペクティブコホート研究を行った。プライマリアウトカムは術後第14病日以内の出血に対する再手術である。相関因子で調整後に多変量ロジスティック回帰分析を用いて周術期ステロイドの使用と再手術とのオッズ比を推定した。また調整リスクにおける差も推定した。成人と小児に患者を分けてサブグループ解析も行った。

結果:再手術の発生率は扁桃摘出術当日にステロイドを投与された患者とそうでない患者で有意な差を認めなかった(1.8%, n = 15 vs 1.5%, n= 79; 調整OR 0.81, 95%CI, 0.45-1.43; P = .46)。成人(OR, 0.73; 95%CI, 0.38-1.38; P = .33)、小児(OR, 1.18; 95%CI, 0.34-4.11; P = .80)でも有意な相関を認めなかった。ロジスティック回帰モデルによる調整リスク差は全患者群で-0.30%(95%CI, -1.05-0.45)、成人で-0.64%(95%CI, -1.82-0.54)、小児で0.13(95%CI, -0.93-1.19)であった。

結論:扁桃摘出術当日のステロイドの使用は出血による再手術の危険性の増加とは関連がない。CIおよりORの幅が広いため、特に小児においてはリスクが増加する可能性
は否定できないが、ステロイド使用による再手術のリスクは成人・小児ともに受容できる範囲である。今回の結果より術後出血による再手術のリスクを考えた場合、扁桃摘出術の周術期ステロイドの使用は安全であると考えられる。