【麻酔論文】 Intraoperative oliguria predicts acute kidney injury after major abdominal surgery (BJA 119(6):127-34 (2017))

腹部大手術後の急性腎障害を術中の乏尿が予測できる

【要約】

(背景)
 急性腎障害のリスクを増加させる術中尿排泄量の下限値は明らかではない。今回のレトロスペクティブコホート研究では腹部大手術における術中尿排泄量と術後のAKIの発症との関連を調査し、AKIのリスクを予測できる最適な閾値を特定した。

 

(方法)
 京都大学病院で腹部大手術(肝臓・直腸・胃・膵臓・食道切除)を受けた3560名の患者からレトロスペクティブに周術期データを収集した。最新のガイドラインで定義されたAKIの術後発症と術中尿量との関連を評価した。ロジスティック回帰分析を行い患者と術中変数を調整し、minimum P-value approachを用いてAKIのリスクをそれ単独で変化させる術中尿量の閾値を決定した。

 

(結果)
 研究対象における全体のAKI発症率は6.3%であった。minimum P-value approachを使用し、0.3ml/kg/hが閾値であり、それ以下の尿量ではAKIのリスクが増大した(調整オッズ比 2.65; 95%CI 1.77~3.97; P < 0.001)。従来のリスクファクターを用いるモデルに0.3ml/kg/h未満の乏尿を追加すると有意にAKIのリスク層別化を改善した(純再分類改善度 0.159; 95%CI 0.049~0.270; P = 0.005)。

 

(結論)
 腹部大手術を受ける患者において、術中の0.3ml/kg/h未満の乏尿は術後AKIリスクの増加と有意に関連がある。