【麻酔論文】 Incidence and Risk Factors of Coagulation Profile Derangement After Liver Surgery: Inplications ofr the Use of Epidural Analgesia - A Retrospective Cohort Study (Anesth Analg 2018;126: 1142-7)

肝臓手術後の凝固能異常の発症率とリスクファクターについて:硬膜外鎮痛の使用に対する意義 - 後ろ向きコホート研究

 (要約)

【背景】

 肝臓手術は腹部大手術である。硬膜外鎮痛は術後合併症の発症率を下げるかもしれない。肝臓手術後にはしばしば止血異常が生じる。凝固障害の状態で硬膜外カテーテルの挿入や抜去(偶発的であってもなくても)は硬膜外血腫を生じる危険性がある。この研究の目的は、硬膜外カテーテルの抜去の妨げになる肝臓切除術後の凝固異常の発症率を調べることと、凝固異常に関連するリスク因子を特定することである。

 

【方法】

 今回、18歳以上の肝臓切除術を受ける患者の前向き多施設観察データベースを用いて後ろ向き研究を行った。主に集めたデータは、年齢・術前からある肝硬変・Child-Pugh分類・術前術後の凝固能・肝臓切除の程度・出血量・術中の輸血量である。INRが1.5以上、または血小板数80000未満を脊髄麻酔ガイドラインに従って凝固異常と定義した。ロジスティック回帰分析を行い選択した要素と術後の凝固異常との関連を調査した。

 

【結果】

 1371名の患者データを評価した。術後の凝固能のデータは759名にあり、そのうち53.5% (95%CI, 50.0〜57.1)に凝固障害を認めた。INRの最大値は術後第1病日に起こり、血小板減少は術後第2・3病日にピークを認めた。多変量解析において、術後の凝固異常と関連があったのは術前からの肝硬変 (OR 2.49 [1.38〜4.51]; P = .003)・術前INR > 1.3 (OR = 2.39 [1.10〜5.17]; P = .027)・術前の血小板数 < 15000 (OR = 3.03 [1.77〜5.20]; P = .004)・肝臓切除大 (OR = 2.96 [2.07-4.23]; P < .001)・術中出血量 1000ml以上 (OR = 1.85 [1.08〜3.18]; P = .025)である。

 

【結論】

 肝臓切除後の凝固異常は53.5%に起こる。硬膜外鎮痛は、肝臓小切除を受ける、術前からの肝硬変の無い、INRと血小板数の正常な患者では安全のように見える。

 

(メモ)

肝臓大手術は3区域以上の切除。硬膜外血腫がすぐに起こるわけではないが危険性はある。