【麻酔論文要約】肺癌術後患者の長期予後を周術期管理が改善するかもしれない。後ろ向きコホート研究より

 通常の麻酔管理をしていれば術中管理中の麻酔が長期予後に及ぼす影響はほとんど無いと考えています。そんな中、コホート研究で肺癌の長期予後に関係する可能性がある論文が出ました。

 

Perioperative Management May Improve Long-term Survival in Patients After Lung Cancer Surgery: A Retrospective Cohort Study (Anesth Analg 2018; 126: 1666-74)

【要約】

(背景)
 非小細胞性肺癌に対する外科手術は主要な治療法であるが、その長期予後は未だ課題である。本研究の目的は肺癌手術後の患者における長期予後を予測する因子を同定することである。

(方法)
 2006年1月から2009年12月までの期間に非小細胞性肺癌に対する手術を受けた患者を今回の後ろ向きコホート研究の対象とした。プライマリアウトカムは術後の生存期間である。多変量Cox比例ハザードモデルを使用し長期予後の予測因子を調査した。

(結果)
 588名の患者の術後フォローアップ期間の中央値は5.2年(四分位:2.0~6.8)であった。フォローアップ終了時点で291名の患者が生存しており、その生存期間の中央値は64.3カ月(四分位: 28.5~81.6)であった。全体の生存率は、術後1年で90.8%、3年で70.0%、5年で57.1%であった。生存期間の短縮と関連していたのは縮小手術(limited resection) (HR 1.46; 95% CI, 1.08~1.98)と巨大腫瘍(HR 1.29; 95% CI, 1.17~1.42) であった。逆に生存期間の延長と関連していたのはBMI高値(HR 0.82; 95% CI, 0.69~0.97)、高分化型腫瘍 (HR 0.59; 95% CI, 0.37-0.93)、縦郭リンパ節の切除 (HR 0.45; 95% CI, 0.30=0.67)および周術期のデキサメサゾンの使用 (HR 0.70; 95% CI, 0.54~0.90)であった。周術期のフルルビプロフェンの使用は長期予後と関連がなかった (HR 0.80; 95% CI, 0.62~1.03)。しかしながらデキサメサゾンとフルルビプロフェンを併用すると長期予後がさらに延長した(調整HR 0.57; 95% CI, 0.38~0.84 両剤とも使用しない場合と比較)。

(結論)
 周術期のデキサメサゾンとフルルビプロフェンの投与が非小細胞性肺癌に対する術後の長期予後を改善する可能性がある。サンプルサイズが小さいことを考慮すると、今回の結果は注意して解釈する必要があり、ランダム化臨床試験が必要であろう。

(メモ)
術中に投与するフルルビプロフェン(ロピオン®)が長期予後を改善する可能性がある、という論文。術後鎮痛目的に腎機能に問題がなければ使用している施設も多いと思います。デキサメサゾンに関しては大腸癌では再発率に悪影響という報告もあるようなので、今の時点では慎重になってしまいます。