【麻酔論文】 産後うつスコアを減少させる予測因子としての無痛分娩:後向き観察研究 (Anesth Analg 2018; 126: 1598-605)

 産後うつは出産後の大きな問題の一つですが、それを無痛分娩が改善するかもしれないという論文がでました。観察研究なのでエビデンスとしては弱そうです。

 

Labor Analgesia as a Predictor for Reduced Postpartum Depression Scores: A Retrospective Observational Study Anesth Analg 2018; 126: 1598-605)

 

(要約)

【背景】

 分娩時の硬膜外鎮痛の使用は産後うつのリスク減少と関連があるが、疼痛の改善と産後うつのリスク減少との関連については明らかではない。本研究では分娩中の効果的な硬膜外鎮痛が産後うつの症候学的減少と関連するかどうかを調査した。

 

【方法】

 単一施設での後向き観察コホート研究を行った。プライマリアウトカムは産後6週間時のエジンバラ産後うつ病質問表(EPDS)のスコアである。最終解析の対象となった妊婦は、(1) 硬膜外無痛分娩を受けている、(2) 分娩期間中に硬膜外無痛分娩開始前後で疼痛評価を受けている、(3) 産後6週でEPDSでうつ病リスクを評価され記録されている妊婦である。単線形回帰と多重線形回帰を行い、不安症とうつ病の既往・その他の精神疾患の既往・薬物中毒・外傷・分娩方法・その他の母体と新生児の合併症について調整した上で、疼痛改善の割合(PIP)と産後うつとの関連を評価する最良のモデルを同定した。

 

【結果】

 201名の患者を最終解析に組み込んだ。疼痛がより改善した女性はEPDSスコアが低くなった(r = 0.025; P = .002)。うつに関連する変数(BMI・不安症の既往・うつ病の既往・3-4度の会陰裂傷・貧血)は有意にEPDSスコアと相関しており、最終的なモデルに組み込んだ。これらの共変数を調整した後でも、PIPはEPDSスコアの予測因子として有意であり(r = 0.49; P = .008)、産後うつスコアの可変性の6.6%を説明できた。疼痛・BMI・不安症とうつ病の既往・会陰裂傷・貧血を含めたフルモデルでは産後うつスコアの可変性の24%を説明できた。

 

【結論】

 硬膜外鎮痛による分娩痛の改善の程度は産後うつスコアを低下させることが予測できたが、産後うつ症状に対するPIPが寄与する相対リスクはその他の確立されたリスクファクターほど大きくはない。今回のデータからは、産後うつの発症における無痛分娩の重要性がより明白に定義される必要があることが支持される。

 

(メモ)

 無痛分娩で疼痛が改善した人は産後うつになりにくいかもしれない。その他の要素の方が寄与する割合は大きいようです。サンプル数は少ないので参考程度に。