【麻酔論文】 術中深部体温に対する室内温度と温風加温装置の影響について (Anesthesiology 2018; 128:903-11)

 手術中の部屋の温度について、麻酔科医ならばいつも寒いと思っているかもしれません。患者さんの体温が下がるからと外科医と駆け引きをしている人も多いかと。そんな状況に一石を投じる論文です。

 

Effect of Ambient Temperature and Forced-air Warming on Intraoperative Core Temperature

 

【要約】

(背景)

 能動的な加温の有る無しで術中の深部体温における室内温度の影響はあまり明らかにされていないままである。筆者らは温風加温装置の有無で深部体温変化に室内温度が及ぼす影響を測定した。

 

(方法)

 今回の非盲目的3☓2要因試験では、292の成人患者をランダム化して室内温度 19℃・21℃・23℃の3群に分け、同時に温風加温装置の有無の2群に分けた。一次アウトカムは麻酔導入後1時間から3時間における深部体温の変化とした。線形混合効果モデルで室内温度・加温方法・それらの相互作用の影響について調査した。

 

(結果)

 加温装置を使用していない患者においては室内温度が1℃上昇するに従い、深部体温の麻酔導入後1時間から3時間における変化は0.03 (98.3% CI, 0.01〜0.06)℃(深部体温)/h・℃(室内温度)緩やかになった(P < 0.001)が、加温装置を使用した患者ではその効果は無かった(-0.01 [98.3% CI, -0.03〜0.01]; P = 0.40)。手術終了時の深部体温は加温装置無しの患者では1℃あたり0.13℃増加した(98.3% CI, 0.07〜0.20; P < 0.01)が、加温装置を使用した患者では影響が無かった(0.02 [98.3% CI, -0.04〜0.09); P = 0.40)。平均3.4時間の手術後、加温装置有り群ではいずれも深部体温36.3 ± 0.5℃であり、加温装置無し群では35.6℃〜36.1℃の範囲となった。

 

(結論)

 術中の室内温度の深部体温に及ぼす影響は温風加温装置を使用している場合には無視できる。加温装置を使用しない場合には室内温度が下がれば下がるほど深部体温も下がる傾向にあるが、その効果は小さい。したがって室内温度は手術室スタッフが快適にすごせるように設定し、患者には加温装置を使用するべきである。

 

(メモ)

 手術中に寒い思いをしている麻酔科医には辛い論文になってしまいました。