【麻酔論文】 腹部大手術に対する制限輸液療法と自由輸液療法について (NEJM 2018.05.10)

制限輸液と自由輸液を比較するRELIEF試験の結果がNEJMに掲載されました。web先行公開です。 ( https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29742967 )

【要約】

 

(背景)

 大手術を受ける患者の早期回復を促進するためのガイドラインでは腹部手術に対する制限輸液戦略が推奨されている。しかしながらその指示するエビデンスは弱く、臓器還流を傷害する懸念もある。

(方法)

 本研究は実用的国際試験で、腹部大手術における合併症リスクが中等度以上ある患者3000名を対象とし、手術中および術後24時間にわたり制限輸液投与計画治療または自由輸液投与計画治療を受けてもらった。一次アウトカムは1年時点での無障害生存である。二次アウトカムは30日時点での急性腎障害率、90日時点での腎代替療法率、および死亡・敗血症性合併症・創部感染の複合エンドポイントである。

 

(結果)

 術中および術後24時間にわたり、1490名が制限輸液療法を受け、その輸液量の中央値は3.7 L(四分位:2.9~4.9)であり、1493名が自由輸液療法を受け、その輸液量の中央値は6.1 L(四分位:5.0~7.4)であった(P < 0.001)。1年時点での無障害生存率は制限輸液群で81.9%、自由輸液群で82.3%であった(死亡および障害に対するハザード比 1.05; 95% CI, 0.88~1.24; P = 0.61)。急性腎障害率は制限輸液群で8.6%、自由輸液群で5.0%であった( P<0.001)。敗血症性合併症または死亡率は制限輸液群で21.8%、自由輸液群で19.8%であった( P = 0.19)。創部感染率は16.5%対13.6%( P = 0.02)、腎代替療法率は0.9%対0.3%( P = 0.048)と制限輸液療法群で高かったが、両群間の差は多因子調整後は有意でなかった。

 

(結果)

 腹部大手術における合併症リスクが中等度以上ある患者において、制限輸液療法計画は自由輸液療法と比較して無障害生存率は高くなく、腎障害のリスクを増加させた。

 

(メモ)

 5ml/kg/hrと8ml/kg/hrとを比較して自由輸液のほうが腎還流が保たれた可能性がありそう。