【麻酔論文】 低リスクから中等度リスクの外科手術患者の術後合併症に対する目標指向型血行動態治療の効果について:多施設ランダム化コントロール試験(FEDORA試験) (BJA,120 (4): 734-744 (2018) )

スペインでの食道ドップラーモニタリングを使用した目標指向型血行動態管理についてのランダム化試験の論文が発表されました。

【要約】

 

(背景)

 本研究の狙いは食道ドップラーモニターを使用して心拍出量(SV)・血圧(BP)・心係数(CI)をガイドに輸液・強心薬・血管収縮薬の投与を行う目標指向型血行動態治療(GDHT)が待機的腹部大手術を受ける患者の術後合併症に及ぼす影響を評価することである。

 

(方法)

 FEDRA試験は前向き多施設ランダム化比較試験で患者と観測者はブラインド化され、待機的大手術を受ける成人患者を対象とした。ランダム化と割付は中央コンピュータシステムで行われた。コントロール群では術中輸液は伝統的原則に基いて投与された。GDHT群では術中の目標は、SV最大値を維持・平均BP値 70mmHg以上・CI 2.5L/m^2以上とした。一次アウトカムは術後180日以内の中等度から重度の合併症の発症率である。

 

(結果)

 全体で450名の患者がランダム化され、GDHT群(n = 224名)・コントロール群(n = 226名)に分けられた。420名から得られたデータを解析した。GDHT群で合併症が有意に少ない結果となった(8.6%対16.6% P = 0.018)。また個々の合併症においても、急性腎障害・肺水腫・呼吸促拍症候群・創部感染などでGDHT群が有意に少なく、病院滞在日数も短かった。両群間で死亡率に差は認めなかった。


(結論)

 食道ドップラーモニターを使用したGDHTは中等度リスク手術を受ける低から中リスク患者における術後合併症と病院滞在日数を減らすが180日死亡率に差は認めない。


(メモ)

 両群に輸液量の差はない。筆者らは輸液のタイミングで差が生まれたとしている。本試験の対象患者はASA-PSが1~2の患者であり、その平均介入時間は190分程度となっている。コントロール群でAKIが8.53%、ARDSが5.69%も生じている。。。