【麻酔論文】 Effect of Throacic Epidural Ropivacaine versus Bupivacaine on Lower Urinary Tract Function (Anesthesiology 2018; 128:511-9)
胸椎硬膜外に投与されたロピバカインまたはブピバカインの下部尿路機能における効果の比較
【要約】
(背景)
ブピバカインを用いた胸椎硬膜外鎮痛は排尿筋の活動低下のため臨床的に排尿後の尿残留と関連がある。今回の研究では残尿測定と最大尿流量を用いてロピバカインとブピバカインの膀胱機能不全の危険性について比較した。ロピバカインは運動神経遮断効果がより弱いため、ロピバカインのほうが残尿量は少ないと考えた。
(方法)
今回の単施設平行群間ランダム化二重盲検化優越性試験では、開腹の腎臓手術を受ける42名の患者を、硬膜外から0.125%ブピバカインまたは0.2%ロピバカインを投与される2群に均等に割り付け、36名が最終的に組み入れられた。組み入れ基準は正常膀胱機能があることである。患者は尿流動態検査を術前および胸椎硬膜外鎮痛が行われている間に施行された。一次アウトカムは術前と術後胸椎硬膜外鎮痛中の残尿量の差である。二次アウトカムは群間・群内の最大尿流速の変化である。
(結果)
術後残尿量の基準値からの変化の中央値は、ブピバカイン群300ml(30~510ml; P < 0.001)、ロピバカイン群125ml(-30~350; P = 0.011)であり、群間で有意な平均差を認めた(-175ml; 95% CI, -295~-40ml; P = 0.012)。最大尿流速の変化の中央値はブピバカイン群で-12(-28~3; P < 0.001)、ロピバカイン群で-4(-16~7; P = 0.025)とブピバカイン群でより低下した。群間の差の平均値は7(95% CI, 0~1; = = 0.028)であった。疼痛スコアは変わりなく、合併症は認めなかった。
(結論)
胸部硬膜外鎮痛においてロピバカインを使用した方がブピバカインを使用するよりも残尿量が有意に少なく、これはロピバカインの方が排尿筋の活動性をより低下させにくいためと考えられる。
(メモ)
ロピバカイン(アナペイン)の方が合併症は少ないかもしれない。レボブピバカイン(ポプスカイン)ではどうなるのか。