【麻酔論文】 Myocardial Protection by Glucose-Insulin-Potassium in Moderate to High-Risk Patients Undergoing Elective On-Pump Cardiac Surgery: A Randomized Controlled Trial (Anesth Analg 2018; 126:1133-41)

 中等度から高リスクの患者が待機的人工心肺使用心臓手術を受ける場合のグルコース-インスリン-カリウムによる心筋保護についてのランダム化コントロール試験

 

 【要約】

(背景)

 低心拍出量症候群は心臓手術後の主な死亡原因である。人工心肺下の心臓手術を受ける中等度から高リスク患者におけるグルコース-インスリン-カリウム(GIK)が心筋保護作用を強めるかどうかを評価した。

 

(方法)

 Bernstein-Parsonnet scoreが7より大きい、待機的に大動脈弁置換術または冠動脈バイパス手術を受ける成人患者を対象にランダム化コントロール試験を行った。患者はランダム化されて、GIK (50mlの40%グルコースに20単位のインスリン・10mEqの塩化カルシウムを添加)または生理食塩水を麻酔導入時から60分以上かけて投与された。一次エンドポイントは開心術後左室機能不全(Postcardiotomy ventricular dysfunction: PCVD)とし、それは120分以上の強心薬のサポートを必要とする新規のまたは増悪した左室機能障害と定義した。経食道心エコーで評価した左室機能の術中変化変化・術後トロポニン値・心臓および呼吸器合併症・ICU滞在日数・病院滞在日数を二次エンドポイントとした。

 

(結果)

 224名がランダム化され、222名を解析した(プラセボ群112名、GIK群110名)。GIKによる事前治療はPCVDの発症率の減少と相関した(リスク比 0.41; 95% CI, 0.25〜0.66)。GIK治療群はバイパス術からのウィーニング後に左室収縮機能がより良好に保たれ、術後第1病日のトロポニン値がより低く(2.9 ng/ml 対 4.3ng/ml)、心臓合併症率がより低く(リスク比 0.69; 95% CI, 0.50〜0.89)、呼吸器合併症率がより低かった(リスク比 0.5; 95% CI 0.38〜0.74)。またICU滞在日数も短く(3日 対 3.5日)、病院滞在日数も短かった(14日 対 16日)。

 

(結論)

 GIK事前治療はPCVDを減弱させ、人工心肺を使用する心臓手術を受ける、中等度から高リスク患者における臨床評価を改善することを示せた。

 

(メモ)

 人工心肺からの離脱時にはLVdDを術前値または2.2〜2.8cm/m^2、平均動脈圧を65〜100mmHg、心拍数を70〜100bpmに管理。

 費用は殆どかからず、効果は少しはありそう。