【麻酔論文】 Effects of Cardiopulmonary Bypass on Renal Perfusion, Filtration, and Oxygenation in Patients Undergoing Cardiac Surgery (Anesthesiology 2017; 126:205-13)

開心術を受ける患者の腎臓の潅流・濾過・酸素化における人工心肺の効果

 

【要約】

(背景)
 急性腎障害は人工心肺を用いる心臓手術において頻発する合併症である。この研究では心臓手術を受ける患者における、腎血流・糸球体濾過率・腎臓の酸素消費量・腎臓の酸素需給の関係性・腎臓の酸素化に対して正常体温の人工心肺が及ぼす影響について調査した。

(方法)
 術前血清クレアチニン値が正常で、正常体温の人工心肺(2.5L/min/m^2)を用いる心臓手術を受ける18名の患者をインフォームドコンセント後に対象とした。全身と腎臓の血行動態を肺動脈カテーテルおよび腎静脈カテーテルを用いて、人工心肺前・中・後に測定した。動脈血と腎静脈血の検体を腎臓の酸素供給量と消費量の測定のために採取した。腎臓の酸素化は腎臓の酸素摂取率から推定した。尿中のNアセチルβDグルコサミニダーゼを人工心肺前・中・後に測定した。

(結果)
 人工心肺は腎臓の血管収縮と血流の再分配による腎臓の血流減少を誘導し、血液希釈と合わさることで腎臓の酸素供給量を20%減少させる。しかし、糸球体濾過率と腎臓の酸素消費量は変化しない。したがって、腎臓の酸素摂取率は39%から45%増加し、これは人工心肺中の酸素受給のミスマッチを表す。人工心肺からのウィーニング後には腎臓の酸素化は血液希釈のためにさらに障害され、腎臓の酸素消費量は増加し、尿中のNアセチルβDグルコサミニダーゼが7倍に増加する。

(結論)
 人工心肺は腎血管収縮および血液希釈を起こして人工心肺中・後の腎臓の酸素化を障害し、尿細管障害のマーカーの増加を伴う。

(メモ)

血圧の維持とHctの維持はしておいた方が良い、かな。