【麻酔論文】 Intraoperative "Analgesia Nociception Index"-Guided Fentanyl Administration During Sevoflurane Anesthesia in Lumbar Discectomy and Laminectomy: A Randomized Clinical Trial (Anesth Analg 2017;125:81-90)

セボフルラン麻酔下の腰椎椎間板切除および椎弓形成術において術中の"Analgesia Nociception Index"を指標にしたフェンタニル投与のランダム化臨床研究

 

 

【要約】

(背景)

 "Analgesia Nociception Index"(以下ANI)は心電図解析による非侵襲的な鎮痛指標である。ANIは0-100で表され、50以上が適切な鎮痛状態であると先行研究から示されている。今回の臨床研究では、ANI解析に最適化した麻酔状況下での術中のANIを指標にしたフェンタニル投与が術後の疼痛に与える影響を調査した。

 

(方法)

 18歳から75歳までの腰椎椎間板切除および椎弓形成術を受ける50名の患者を対象とした。参加者は術中のフェンタニル投与法をランダムに割り付けられ、麻酔科医の標準的な臨床投与法(コントロール群)またはANIを50以上を維持するように5分毎にフェンタニルをボーラスする投与法(ANI群)を受けた。標準化された麻酔(セボフルラン・ロクロニウム・非オピオイド性鎮痛薬)が量右群に行われた。プライマリアウトカムはリカバリールームでの0-90分におけるNRS疼痛スコアである。リカバリールームにおける、フェンタニル投与量・嘔気・嘔吐・シバリング・気道閉塞・呼吸抑制・鎮静・覚醒時間・滞在時間と、術中におけるフェンタニル投与量・フェンタニルの予測効果部位濃度・ANIと予測効果部位濃度との関係・体動の発生率をセカンダリアウトカムとした。統計解析は両側t検定・χ二乗検定・一般化推定方程式モデルによる順序ロジスティック・線形効果モデルで行った。多重比較法としてボンフェローニの補正をプライマリアウトとセカンダリアウトカムに使用した。

(結果)

 リカバリールーム期間(0-90分)におけるNRS疼痛スコアはコントロール群と比較して平均でANI群が1.3低かった(95% CI, -0.4~2.4; P = .01)。ANI群の患者でリカバリールームで追加投与されたフェンタニルは64%少なかった(95% CI, -12%~85%; P = .44)。ANI群では嘔気スコアは82%低く(95% CI, -19%~96%; P = .43)、シバリングの発生率が低かった(ANI群 4%、コントロール群 27%、P = .80)。術中ではANI群の患者で挿管から最初の皮膚切開までの間で予測フェンタニル効果部位濃度が平均27%高かった(95% CI, 3%~57%; P = .51)。

(結論)

 術中にANIを指標にしたフェンタニル投与を受けた患者ではリカバリールームでの疼痛が減少した。

 

(メモ)ANIの疼痛コントロールで少なくとも人がやるのと遜色ないかもしれない